東京で暮らすようになって、もう随分と年月が流れ、人生の半分近くを関東で過ごしていますが、頻繁に
「関西のご出身でしょ?」
と言われ続けています。
理由は、私の話し言葉とイントネーションにあるので、まあバレバレなんすが・・・、親しくなってくると、たまに、
「関西人って大阪弁を直そうとしないよね」
とも言われます。
今回は、この言に潜む気持ちと2つの誤解について、思うところを記します。
ご出身、関西でしょ?
「出身は関西でしょ?」
これ、結構、頻繁に言われるのですが、初対面に毛が生えた程度の関係になった人が口にする言葉です。
この言葉を発する人で、素直に言っている人は別に何とも思わないのですが、中には
「どうだ、俺は見破ってやったぞ」
とか
「すぐに分かったぞ」
といった、若干、上から目線的なニュアンスを込めてくる奴がいるんですよね。
そういう奴って、だいたい、ニヤニヤしながら言ってくるんですけど。
私としては、もう慣れっこではありますが、それでも
「それがどないしてん。しゃべってんの聞いとったら、そら、アホでも分かるやろ」
と思いますし、特に「上から目線」的なニュアンスを感じるとイラっとするんですよね。
なので、そういうやつに対しては、
「で?それが、どうかしましたか?」
とつい冷たく返してしまいます。
(もちろん、相手によります・・・)
人と話をしているとき、相手の言葉のイントネーションや使っている単語に特徴があって、それがどのエリアの方言か、なんとなく分かったとしても、自分がそのエリアの出身(同郷人)でない限り、普通は、
「出身は○○でしょ?」
と、いかにも「当ててやったぞ」という言い方はしませんよね。
常識のある人ならば、
「ご出身はどちらですか?」
と、ある程度、オブラートに包んで尋ねるはず。
にも関わらず、関西弁を話す人間に対しては、
「出身は関西でしょ?(あるいは、大阪でしょ)」
と言う人が多いんですよ。
なぜか?その理由はいろいろあるんでしょう。
単純に言いたいだけ、ってのもあるでしょうし。
でも、初対面の人間に対して不躾な問い方であるのは間違いないですし、相手によってはイラつかせることがあり、言った本人は「常識の無い人間」だと思われる可能性があります。
「関西人って大阪弁を直そうとしない」の2つの誤解
続いて、「関西人って大阪弁を直そうとしないよね」という言の中に潜んでいる2つの誤解について、です。
関西弁か?大阪弁か?
まず、関西人(関西出身者)が話す言葉を「大阪弁」だと思っている人が多いのですが、それは大きな誤解。
関西にもいろいろなエリアがあって、それぞれで話されている方言は、微妙に違うんです。
大阪弁は、関西ローカルの方言のひとつです。
(と言っても圧倒的な勢力を誇っていますが)
なので、「関西弁を話している」というのはOKですが、一括りに「大阪弁」とするのは間違いです。
関東弁だって同じで、東京でも下町言葉もあれば山の手言葉もあるし、神奈川県でも横浜と湘南だとかなり違いますよね。
(あと、東京弁を標準語と言う人もいますが、これも大きな間違いなんだとか。標準語のイントネーションは言語学的には、関西弁(京都弁)に近いそうです)
ちなみに、私がしゃべっているのは、出身の播州弁に、私が暮らしていた、あるいは、私にとって影響の大きかった人たちの出身地である河内弁や京都弁、和歌山弁が入り混じった関西弁で、たまに東京弁の単語を使うという変な言葉です。
東京では「大阪弁」と言われますが、関西に遊びに行って友人たちと話しているときは、
「おまえ、何、イチびって東京弁しゃべってんねん。キショいわ」
なんて言われますからね。
関西弁を直さないという誤解
もうひとつある誤解は、
「関西人は関西弁を意地でも直さない」
というもの。
これも、たまに言われることがあるんですが、ハッキリ言っておきます。
「直さない」のではなくて、「直せない・直らない」のです。
私の知っている関西出身者で、現在、関東近辺で暮らしている人は、皆が皆、全員、関西弁のイントネーションが直っていません。
使う単語は、東京弁や横浜弁の言葉、今風の言葉なんですが、イントネーションは関西弁そのものであり、早口になったり、気が緩んだときは、単語も含めて確実に関西弁をしゃべっています。
こういう状況を見て、
「関西人ってさぁ・・・何があったって、関西弁を直そうとしないよね」
ってなるんでしょうけど、これまた私の知る限りですが、関西人は皆、一度や二度は、東京弁(関東弁)を話そうとトライはしてるんですよ。
でも、話せないんですよね。
友人でTOEIC満点という奴がいます。
兵庫県の神戸市出身で海外で生活をした経験がないにも関わらずTOEICで満点を取っているので、むちゃくちゃ語学の才能はあるはず。
なのに、そいつもベタベタの関西弁が抜けきらないし、東京弁がしゃべれないんですよ。
で、聞いてみたら、やっぱり、
「直そうとしたことはあるけど、直らなかったので、もう諦めた」
と言ってました。
そいつの英語は、きっと関西なまりの英語なんでしょうね。
方言の京都同心円説
では、何ゆえ関西人は関西弁から脱却できないのか?
私は、ひとつに、永い年月を経て刷り込まれたDNAに原因があるのではないか?と睨んでいます。
私、学生時代に方言を勉強したことがあるんです。
1年のときのゼミ担当の先生が言語学の専任講師で、本人が得意分野の授業をやっていたので、強制的に勉強させられました。
で、その時に学んだのが、方言の「京都同心円説」なるもの。
平安京以降、日本の中心であった京都から、まるで同心円を描くように方言が伝播したという説で、京都からの直線キョリが同じだと使う単語やらイントネーションが同じだという説です。
詳しい中身はすっかり忘れていますが、その時に学んだことは、「ほんとだ~」と納得の行く内容でした。
(「ほんとだ~」っていう事象だけを集めて、「ホレ、どうだ。言えてるだろ?」としていたキライはありますけど)
このように、ずーっと何百年も言葉の中心地であった京都、そして、その影響の強い畿内(≒関西)で暮らしていた人は、永い年月をかけて関西弁がDNAにみっちりと刷り込まれていったのではないかと。
だからこそ、関西人は関西弁を直そうとしても直らない身体になってしまったと思うのですが、いかがでしょうか、ね?
ということで、今日、久々に上から目線で「出身は関西でしょ?」と言われて、イラっとしたので書いてみました。
最後までお読みいただきありがとうございました